わたしの感情の歴史
心のページに刻まれた想いを綴ってゆきます
赤い花弁
赤い花弁が真昼の空に映えて 風にゆれている
心を離れてなお心に留まりつづける色
陰が沈んでゆく明るい日差しの道に
消えてゆくもの いつまでも消えない残像
人が人であるならば 人が人である限り
留まりつづける色のなかにわたしはいる
怖ろしい日の夕暮れ
上ずった目の視線
影が見つめている 遠い砂浜の向こうから 足は繋がったまま
逃れようとして逃れられないものは
憎しみでもなく不安でもなく
追憶の傷跡に残る痛みの共鳴なのか
あの階段を上って空へと消えていった
昨日の記憶
在りし日の
人間の声
12
曼珠沙華
脇腹の骨の隙間に疼いている火
つめたいマグマが河原の土手に噴いている
つめたい血が鮮やかに
さめた目で風を眺めている
諦めた指と柔和な背骨
乾いてゆく草々
腐敗する艶やかな唇
落ちていった母の声
発狂した夏の夜の記憶
色は熱を垂れ流して
色は人知れず時間のなかに沈んでゆく
無数の針が地軸のネジに巻かれて土に沈んでゆく
遅れてきた声が
山肌を上ってゆく
ため息の主が
列車の窓から眺めている
やがてトンネルへと消えてゆく
光の視覚と死角の間に
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