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わたしの感情の歴史

心のページに刻まれた想いを綴ってゆきます

「朝の鏡」北村太郎 


朝の鏡     北村太郎


朝の水が一滴、ほそい剃刀の
刃のうえに光って、落ちる---それが
一生というものか。不思議だ。
なぜ、ぼくは生きていられるのか。曇り日の
海を一日中、見つめているような
眼をして、人生の半ばを過ぎた。

「一個の死体となること、それは
常に生けるイマージュであるべきだ。
ひどい死にざまを勘定に入れて、
迫りくる時を待ちかまえていること」
かつて、それがぼくの慰めであった。
おお、なんとウェハースを嚙むような

考え!おごりと空しさ!ぼくの
小帝国はほろびた。だが、だれも
ぼくを罰しはしなかった。まったくぼくが
まちがっていたのに。アフリカの
すさまじい景色が、強い光のなかに
白々と、ひろがっていた。そして

まだ、同じながめを窓に見る。(おはよう
女よ、くちなしの匂いよ)積極的な人生観も
シガーの灰のように無力だ。おはよう
臨終の悪臭よ、よく働く陽気な男たちよ。
ぼくは歯をみがき、ていねいに石鹸で
手を洗い、鏡をのぞきこむ。

朝の水が一滴、ほそい剃刀の
刃のうえに光って、落ちる---それが
一生というものか。残酷だ。
なぜ、ぼくは生きていられるのか。嵐の
海を一日中、見つめているような
眼をして、人生の半ばを過ぎた。


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わたしのど下手な詩評を書こうと思いましたが、思い浮かばないので、また後ほど追記します。


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Posted on 2012/10/29 Mon. 08:27 [edit]

category: 北村太郎

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