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わたしの感情の歴史

心のページに刻まれた想いを綴ってゆきます

「アミニストの歌 人体模型について」村野四郎 


アミニストの歌          村野四郎
       人体模型について


あなたは男でも女でもない

性をたたれた肉体の その無限の寂寥に

はてしない宇宙の青さが

ひりひりと沁みるのだ


あなたは そっと眼をとじている

その弱々しい抵抗

(だがその眼は内にむかっても閉されている)


さけびをうばわれた口

遠く忘れさられた耳や 鼻から

悲哀はいちめんに噴きだして

血管のように爪先までながれている


存在から切りはなされた

この孤独の原型

そして亡びの道を断たれたもの

あなたは誰だ あなたは何処から来た

そしてもう

何処へと聞くな


腐敗を拒絶され

永劫の明るみにさらされた人

あなたは死者ではない

あなたは 悲哀に飾られた幻影の人

泳ぐようなあなたの手は かすかに

文明の震動でふるえている


--------



アミニズムとは

「生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、 もしくは霊が宿っているという考え方」--ウィキペディアより

であるらしい。

村野四郎がアミニストであったかどうかは知らないが、詩人はひとりのアミニストとして一個の人体模型を見つめている。

ショーウィンドウを華々しく飾るマネキンとは対照的に、エタノールの匂いが漂う研究室で、病院の診察室で、時に好奇の目に晒されながら、グロテスクな姿で立ちすくむ人体模型。

あれが本当の人間ならば、事故死体か殺人死体か絶望的な重症患者か、いずれにしても身を横たえているのが自然な情景だ。

しかし人体模型は、平然と目を閉じて、からかう子供たちを睨みつけるでもなく、好奇の目にたじろうことなく、立っている。

その人体模型の異様さの中に詩人は何を見たのか。人体模型の耳や鼻から噴きだした悲哀に重なり合ったイメージは、

ほかでもない、わたしたち現代人そのものだったのだ。


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Posted on 2012/10/31 Wed. 20:32 [edit]

category: 村野四郎

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