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わたしの感情の歴史

心のページに刻まれた想いを綴ってゆきます

「詩がきみを」石原吉郎の霊に 鮎川信夫  

詩がきみを         鮎川信夫
    石原吉郎の霊に

あのとき

きみのいう断念の意味を

うかつにも

ぼくはとりちがえていた

生きるのを断念するのは

たやすいことだときみが言ったとき

ぼくはぼんやりしていた

断念とは

馬と蹄鉄の関係だ

と教えられても

レトリックがうまいなと思っただけで

蹄鉄が馬を終わるとは

どういうことか

ついに深く考えずじまいであった

酒杯をかたむける

そのかたむけかたにも

罪びとのやさしさがあって

それがきみの作法だった

ぼくはうっとりと

自然にたいして有罪でない人間はいない

というきみの議論にききほれたものだ

きみにとって詩は

残された唯一の道だった

いつかみずからも

美しい風景になりたいという

ひたすらなねがいで

許されるかぎりどこまでも

追いもとめなければならない

断念の最後の対象だった

そしてきみが

詩を終わったと感じたのは

やわらかい手のひらで

光のつぶをひろうように

北條や足利の美しい光景をすくってみせたときだろう

ぞっとするような詩を書き終えることで

断念の意味は果たされたのだ

苦しんでまで詩を書こうとは思わない

きみにとって

もはや暁紅をかいまみるまでもなかった

死はやすらかな眠りであったろう

ぼくはきみに倣って

「きみが詩を」ではなく

詩がきみを

こんなにも早く終えたことを悲しむ


---------



最後のフレーズ

 「きみが詩を」ではなく

 詩がきみを

 こんなにも早く終えたことを悲しむ

このフレーズが心に残っていたのを、想いだしておもわず書き写してしまいました。

石原吉郎の詩はいままでほとんど読んだことはなかったですが、これから読みたいと思いました。

抒情という言葉に弱い人ならば、誰だって鮎川信夫を好きになるでしょう。

わたしも抒情に引きずられて、抒情に裏切られても、抒情を捨てきれずにいままで生きてきました。

詩が人を終わらせてくれるような、そんな詩人にわたしはなりたかった。





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Posted on 2012/10/25 Thu. 20:41 [edit]

category: 鮎川信夫

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